研究概要 |
紫外線による表皮の肥厚にHB-EGFを介するEGFRのtransactivationが関与しているかについてHB-EGFノックアウトマウスを用いて解析した。通常のノックアウトマウスは胎児期にlethalであることから、皮膚特異的ノックアウトマウスを作製した。K5プロモーター下流にCre cDNAを組み込み、表皮特異的にCre recombinaseを発現させた。もう1系統のマウスはHB-EGFの染色体の両端にLoxP 配列を組み込んだホモマウスで、この2系統を掛け合わせることにより、表皮でのみCre recombinaseが作用し,表皮において特異的にHB-EGFが欠損したマウスを作製した。マウス背部の体毛を剃毛し、UVを照射し、MED(最小紅斑膿度)を測定した。MEDを超過しない、すなはち、susn burnを起こさない用量、(150 mJ/cm2)を1回照射し、72時間後にマウス背部より皮膚を採取し、表皮の肥厚・萎縮、膠原繊維の変性の程度など、皮膚構成成分を病理組織学的に評価した。のUVBをノックアウトマウス、ワイルドタイプマウスに照射し、72時間後の表皮の肥厚を組織学的に検討した。ワイルドタイプの照射群は非照射群と比較して、表皮は約3倍に肥厚していたが、ノックアウトマウス群では表皮の肥厚は完全に抑制されており、非照射群との差は認めなかった。紫外線は表皮角化細胞に対してさまざまな生物学的作用をもっているが、紫外線によるEGFR(epidermal growthfactor receptor)の活性化は、紫外線によるHB-EGFの膜型から遊離型への変換により引き起こされていること、すなわち、HB-EGFを介するEGFRのtransactivationであることが明かとなった。さらに、紫外線による表皮の肥厚にHB-EGFを介するEGFRのtransactivationが関与していることが表皮特異的HB-EGFノックアウトマウスを用いることにより明かとなった。これらの知見は、HB-EGFの膜型から遊離型への変換を抑制することにより、紫外線による皮膚障害が予防できうることを示唆すると考える。
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