研究課題
基盤研究(C)
紫外線曝露は皮膚の発癌などの様々な皮膚障害を引き起こす。紫外線の皮膚に対する作用は以前より知られているが、その作用機序はほとんど解明されていない。紫外線は表皮角化細胞に対して様々な生物学的作用を持っているが、その一部にEGFレセプターの活性化が知られている。しかし、この作用を起こすメカニズムについては全く解明されていなかった。そこで、本研究では紫外線のEGFレセプター活性化のメカニズムについて明らかにすること目的として行った。紫外線(UVB)をヒト表皮角化細胞に照射しEGFレセプターが活性化するかについて検討を加えた。100mJまでの範囲でUVBを照射したところ、30mJ以上の照射量では照射15-20分後にEGFレセプターのリン酸化がウェスタンブロット法にて認められた。次ぎにこのリン酸化がEGFレセプターリガンドのshedding(膜型細胞成長因子が酵素により遊離型に変換される機構)により引き起こされている可能性を検討するため、あらかじめADAMインヒビターで処理した後にUVBを照射し、EGFレセプターのリン酸化を検討したしたところ、約30%の抑制がみられた。さらに同様の実験にてHB-EGF中和抗体、EGFレセプター中和抗体、CRM197では約80%の抑制が認められた。以上の結果より、UVBによるEGFレセプターの活性化は、そのほとんどは内因性の膜型HB-EGFが遊離することによるものであることが明かとなった。さらに紫外線による表皮の肥厚にHB-EGFを介するEGFRのtransactivationが関与しているかについてHB-EGFノックアウトマウスを用いて解析した。通常のノックアウトマウスは胎児期にlethalであることから、皮膚特異的HB-EGFノックアウトマウスを作製した。マウス背部の体毛を剃毛し、UVを照射し、MED(最小紅斑濃度)を測定した。MEDを超過しない、すなはち、susn burnを起こさない用量(150mJ/cm2)を1回照射し、72時間後にマウス背部より皮膚を採取し、病理組織学的に評価した。ワイルドタイプの照射群は非照射群と比較して、表皮は約3倍に肥厚していたが、ノックアウトマウス群では表皮の肥厚は完全に抑制されており、非照射群との差は認めなかった。本研究の成果により、紫外線によるEGFRの活性化は、HB-EGFの膜型から遊離型への変換により引き起こされていること、すなわち、HB-EGFを介するEGFRのtransactivationであることが明かとなった。さらに、紫外線による表皮の肥厚にHB-EGFを介するEGFRのtransactivationが関与していることが表皮特異的HB-EGFノックアウトマウスを用いることにより明かとなった。これらの知見は、HB-EGFの膜型から遊離型への変換を抑制することにより、紫外線による皮膚障害が予防できうることを示唆すると考える。
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