ベイシジンは免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜貫通糖蛋白質で、腫瘍の浸潤と転移に関与する可能性が報告されている。平成15年度には免疫組織学的解析を行ない、その結果を統計的に解析し、悪性黒色腫細胞におけるベイシジンの発現と腫瘍の転移には相関があることを明らかにし、更にベイシジンは黒色腫細胞上に発現し腫瘍巣周囲の線維芽細胞におけるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現を誘導することによって浸潤・転移に関与している可能性を示した。平成16年度には、in vitroの系でベイシジンが線維芽細胞におけるMMPの発現を誘導するか否かを検討した。すなわち、ベイシジンを発現しているメラノーマ細胞株、G361とKHm-1/IVを真皮線維芽細胞と混合培養すると、線維芽細胞におけるMMP-1(collagenase)、MMP-2(gelatinase)、MMP-3(stromelysin)、MT1-MMP(膜型MMP)の産生が誘導されることをウェスタンブロッティング法とゼラチンザイモグラフィーにて明らかにした。最終年度には線維芽細胞の存在によって黒色腫細胞の浸潤が誘導されるか否かを検討した。実験には人工基質でコートしたフィルターで上下に二分されたダブルルーメンチェンバーを用いた。上室にて黒色腫細胞を培養し、下室上面まで基質を浸潤した細胞数を測定した。下質に線維芽細胞を加えることにより、浸潤細胞数は有意に増加し、ベイシジン抗体にて抑制された。以上の結果は、メラノーマ細胞上のベイシジンが線維芽細胞におけるMMPの発現を誘導し、腫瘍細胞の浸潤を促進していることを示している。
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