研究概要 |
IRF2はインターフェロンα/β遺伝子の発現を抑制する転写因子である。今回、IRF2が乾癬遺伝子であるとの作業仮説のもとに、日本人乾癬患者でのIRF2遺伝子多型を検討した。特にIRF2に注目したのは以下の理由による。第1に、IRF2のノックアウトマウスは乾癬様の皮疹を生じ、第2に、IRF2遺伝子が存在する染色体生4q35はイギリスの家族性乾癬家系で連鎖が確認され、第3に、肝炎治療にインターフェロン注射を行うと、乾癬の急激な悪化を示す。従って、IRF2は分子遺伝学的にも、またその機能の上からも乾癬の有力な候補遺伝子であると考えた。IRF2遺伝子のコード領域とプロモーター領域について乾癬患者と健常人コントロールについて遺伝子多型の解析を行った。プロモーター領域に-535G>Aの多型が認められ、この多型は40歳以下の若年発症の乾癬と相関を認めた。-535G alleleには転写因子USF(upstream stimulatory factor)が結合することが予測されたため、ゲルシフトアッセイおよびスーパーシフトアッセイを行ったところ-535GのアレルのみにUSF1,USE2が結合し、-535Aのアレルには結合しないことがわかった。このプロモーター多型が転写活性に影響を与えるのかどうかについて、in vitroでの検討を加えた。それぞれの多型を含むプロモーターを哺乳動物発現ベクターに組み込み、HaCaT細胞、HepG2細胞、HeLa細胞、Jakut細胞、DND39細胞にトランスフェクションし、その転写活性をルシフェラーゼの発現により定量した。しかしながら、このin vitroの系ではこれら2つのアレルに転写活性の違いを見いだすことはできなかった。
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