研究概要 |
1.トリクロロ酢酸とフェノールの人皮膚に及ぼす影響 トリクロロ酢酸とフェノール塗布後の皮膚を経時的に生検して、ケラチン6,7,10,16、インテグリン、カドヘリン等の免疫染色を行い、創傷治癒の過程の動態をみた。その結果、今まで同じ作用として考えられていた2つの試薬の機序が異なることを明らかにした。TUNEL法、第VIII因子、caspase-3、Fasを用いてアポトーシス誘導を免疫組織学的に検討した。フェノールの作用と、特に血管内皮細胞への早期のアポトーシス誘導が示唆され,一方、60%TCAによる組織障害には、アポトーシスの関与は否定的と考えた。 2.皮膚悪性腫瘍に対するケミカルピーリング治療の効果 外科的処置が出来ない皮膚癌の患者に治療として行った。治療後1〜4年の経過観察で、完治が可能であると考えられるのは、日光角化症、ボーエン病、表在性の基底細胞癌の患者であった。また、その中で治療を中止し、外科的処置の必要性を認めた4症例(日光角化症2例、ボーエン病2例)を病理組織的に検討した。その結果、日光角化症の1例、ボーエン病の2例はすべて多発性症例で、免疫組織学的検討の結果、初診時生検組織像より癌抑制遺伝子のp-53が腫瘍細胞に強く発現していた。 3.その他 通常、ざ瘡や日光性色素斑などのいわゆる"しみ"治療に用いられているグリコール酸の効果を検討した。試薬の作用を人皮膚で確認するために、同じ濃度、pHに調節した、グリコール酸、乳酸、クエン酸、酢酸を長期塗布し、組織学的及び免疫組織学的に検討した結果、グリコール酸と乳酸で、表皮肥厚、メラニンの減少、真皮膠原線維の増加、コラーゲン1、プロコラーゲン1の増加を確認した。以上より、臨床効果を裏付けるような試薬の人皮膚への有効性が確認された。
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