研究概要 |
最近の報告によれば水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus ; VZV)はメモリーCD4^+T細胞に選択的に感染し、CLAなどの接着分子を発現せずに皮膚へホーミングするとされている。しかし、我々は既にCLAが直接的なホーミングレセプターではなく糖転移酵素であるfucosyltransferaseIV(Fuc-TIV)及びVII(Fuc-TVII)の発現こそがホーミングに重要であることを示しており、本研究ではVZV感染細胞がFuc-TIV、Fuc-TVII発現を介して皮膚にホーミングしうるかを検討した。用いた検体は、水痘病変部、帯状疱疹部、水痘をまだ形成していない帯状疱疹汎発疹部及び非病変部である。 1.各種メーカー(CD3,CD4,CD8)の検討では、水疱部では真皮中層にかけてCD4^+T細胞及びCD8^+T細胞が混在し多数浸潤していたが、病期が進むにつれCD8^+T細胞が増加する傾向が認められた。水疱を形成していない初期の段階と考えられる汎発疹部では毛嚢部にCD4^+T細胞が浸潤しCD8^+T細胞は認められなかった。非病変部では、少数ながら毛嚢部にCD4^+T細胞が認められるものもあった。 2.CLA, Fuc-TIV及びFuc-TVII染色では、水疱部に認められるCD4^+T細胞のうち、CLA、Fuc-TVII両者の発現するduble positive細胞が約50%認められた。Fuc-TVII単独陽性は30%程度だった。Fuc-TIVの発現は確認出来なかった。汎発疹部・非病変部毛嚢のCD4^+T細胞はCLAを発現せずFuc-TVIIのみを発現していた。 3.上記で確認された浸潤細胞がVZV抗原を発現しているかについて検討した。水疱部では主に水疱部蓋〜水疱底の表皮細胞に陽性所見がみられたが、病変辺縁部の真皮浸潤細胞にもウィルス抗原を発現している細胞が認められた。これらの細胞は2重染色にてCD4^+T細胞で、Fuc-TVII単独陽性が大部分を占めていることが連続切片にて確認された。また、汎発疹部・非発疹部毛嚢のCD4^+T細胞にはウィルス抗原は認められなかった。 以上より、VZV感染CD4^+T細胞はCLAの発現なしにFuc-TVIIの発現のみで皮膚に遊走する可能性が示された。
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