研究概要 |
ウィルス感染時に活性化、増殖するCD8^+T細胞の多くが、ウィルス特異的な細胞であることが知られている。このような細胞の一部はアポプトーシスによる細胞死から逃れ、末梢の組織内でメモリーT細胞(effector memory T細胞)として残存、生体防御機構の一端を担っている。同じ部位に繰り返し皮疹を生ずる固定薬疹の病変部にはeffector memory CD8^+T細胞が常在し、このCD8^+T細胞が原因薬投与により過度に活性化、局所の傷害を引き起こすことを我々は明らかにしてきた。そこで本研究では、固定薬疹病変部を経時的に検討することによりeffector memory CD8^+T細胞の分化と役割を明らかにするとともに、これらの細胞が皮膚に常在するための因子を明らかにすべく検討を行った。原因薬投与により固定薬疹病変部effector memory CD8^+T細胞は、CD8^+ CD45RA^+からCD45RO^+へとその発現を変えるとともにCD56,CD94,CD122(IL-15R)などを発現しNK細胞類似のphenotypeを示すようになる。さらに、effector memory CD8^+Tの細胞の生存に重要なIL-15を表皮細胞が発現していた。実際、原因薬中止4年後にもeffector memory CD8^+T細胞が病変部に常在し続けることが確認された。以上より、固定薬疹病変部に常在するeffector memory CD8^+T細胞は、本来は生体防御のための細胞でありながら活性化と共にNK細胞類似の表面マーカーを発現し、局所の傷害に係わっていることが明らかになった。さらに皮膚はこれらの細胞が生存するのに好都合な環境を作ることにより、生体防御機構としての役割を果たしていると考えられた。
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