平成15年度の科研費申請書の研究計画に沿って実験を実施した。 1)TGF-βの細胞内情報伝達分子群にSmad系の蛋白群があり、Smad3はTGF-βの情報伝達を促進させ、Smad7は抑制させる。共同研究者瀬戸口の実験室でSmad遺伝子をアデノウイルスベクターに組み込んで、次のものを準備した(Smad3、Smad7、レポーターE.coli lacZ)。Smad遺伝子には内在性Smadと区別するためtag標織を組み込んだ。まず、これらのベクターを真皮線維芽細胞に感熟させ、導入されていることをtag標織の染色性で確認した。ついで遺伝子導入した真皮線維芽細胞をタイプIコラーゲン中に包埋してゲル化させ、その影響を調べた。その結果、TGF-βはゲル収縮を促進させ、Smad3はTGF-βの収縮作用をさらに増強した。一方、抑制系のSmad7は単独でも線維芽細胞のゲル収縮を抑制したが、添加したTGF-βの効果も抑制した(発表論文参照)。 次に、ヒトの頭部毛包から毛乳頭細胞と外毛根鞘細胞を分離した。同じ要領でSmadsの遺伝子導入実験を実施したい。 2)発毛抑制因子であるFGF-5やその細胞膜上の受容体であるFGFR1の働きをアンチセンス核酸で抑制することにより発毛を促すことができるか、in vitroの毛乳頭細胞と器官培養を用いた実験系で明らかにする。C3H/Heマウスから分離した髭毛包を無血清培地で31℃、95%O_2-5%CO_2の条件で培養した。FGFR-1 mRNAのアンチセンス核酸効果が得られる20-merの配列とそのランダム鎖をいくつか準備し、培養開始24時間後に添加した。毛包の細胞活性は72時間培養終了後に毛球部で代謝されるAlamarBlue色素の蛍光強度で測定した。現在、毛乳頭への導入率を蛍光抗体染色法で確認し、アンチセンス核酸効果について検討中である。
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