研究概要 |
TGF-βの細胞内情報伝達分子群にSmad系の蛋白群があり、Smad3はTGF-βの情報伝達を促進させ、Smad7は抑制させる。共同研究者瀬戸口の実験室でSmad遺伝子(Smad3,Smad7,レポーターE.colilacZ)をアデノウイルスベクターに組み込み、真皮線維芽細胞に感染させ、これらの真皮線維芽細胞をタイプIコラーゲン中に包埋してゲル化させ、その影響を調べた。その結果、TGF-βはゲル収縮を促進させ、Smad3はTGF-βの収縮作用をさらに増強した。一方、抑制系のSmad7は単独でも線維芽細胞のゲル収縮を抑制したが、添加したTGF-βの効果も抑制した(発表論文参照)。またケロイド由来の線維芽細胞はゲル収縮力が強く、TGF-βによるゲル収縮促進作用はIFN-γによって抑制されなかった(発表論文参照)。 次に、発毛抑制因子であるFGF-5よその細胞膜上の受容体であるFGFR1の働きをアンチセンス核酸で抑制することにより発毛を促すことができるか、in vitroの毛乳頭細胞と器官培養系を用いた実験系で明らかにした。CH3/Heマウスから分離した髭毛包を無血清培地で31℃、95% O_2-5% CO_2の条件で培養した。FGFR-1 mRNAのアンチセンス核酸効果が得られる20-merの配列とそのランダム鎖をいくつか準備し、培養開始24時間後に添加した。毛包の細胞活性は72時間培養終了後に毛球部で代謝されるAlamarBlue色素の蛍光強度で測定した。その結果FGFR1に対する30μMのアンチセンス核酸は毛球部の細胞活性を30%増加させた。しかし毛幹の伸長には影響を与えなかった(発表論文参照)。アンチセンス核酸の技術はさらに改良が必要であるが、将来的に発毛剤への応用が可能である。この実験とは別に抗真菌薬であるケトコナゾールに発毛作用があることを発見して論文として報告した(発表論文参照)。
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