研究概要 |
C57BL/10JHir系統のブラックのマウスを繁殖させ、新生児皮膚より表皮細胞浮遊液を得て、未分化なメラノブラストを培養した。また、別個に表皮細胞浮遊液からケラチノサイトを無血清初代培養し、純粋集団になってから培養皿よりトリプシン-EDTAを用いてはがし混合培養した。この実験からケラチノサイトがメラノサイトの分化を促進することがわかった。メラノサイト刺激ホルモン(MSH)はケラチノサイト存在下でメラノサイトの分化を促進することも明らかになった。これらの結果をふまえてケラチノサイトに由来するメラノサイト分化促進因子について検討した。分化のマーカーとしては、メラニン量やメラニン産生に重要なチロシナーゼ(Tyr),チロシナーゼ関連タンパク質1および2(TRP-1,-2)などの酵素の活性を調べた。その結果、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子がケラチノサイトに由来するメラノサイト分化促進因子の一つであることがわかった。また、未分化なメラノブラストもケラチノサイトによって増殖が促進されたが、ケラチノサイトに由来するメラノブラスト増殖促進因子の一つが顆粒球マクロファージコロニー刺激であることがわかった。同様に新生児皮膚より表皮細胞浮遊液を得て、分化したメラノサイトをメラノサイト増殖培養液で培養した。個別に表皮細胞浮遊液からケラチノサイトを無血清初代培養し、メラノサイトと混合培養した。この場合もケラチノサイトがメラノサイトの増殖を促進することがわかった。純粋なメラノサイト集団に種々の増殖因子、サイトカイン等を加えて培養したことろ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子がメラノサイトの増殖を促進した。顆粒球マクロファージコロニー刺激因子の抗体をケラチノサイトとメラノブラスト・メラノサイトの混合培養に加えたところメラノブラスト・メラノサイトの増殖およびメラノサイトの分化が抑制された。これらの結果から、メラノサイトの分化、メラノブラスト・メラノサイトの増殖はケラチノサイトによって支配されており、そのケラチノサイト由来因子の候補として、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子が示唆された。
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