研究概要 |
わが国の小・中学生における抑うつ状態について検討するため、Birleson自己記入式抑うつ評価尺度(DSRS-C)を用いて調査を行った。対象は札幌市、千歳市、岩見沢市の小学1年生から中学3年生までの3331人(男子1535人、女子1796人)である。その結果、以下の4点が明らかになった。 (1)全対象のDSRS-C平均得点は、9.02±5.81点(男子8.63±5.30、女子9.35±6,19)であり、これまでの欧米の報告と比べて高い値であった。DSRS-C得点は女子が男子に比べて有意に高く、年齢が上がるごとに得点も有意に上昇していた。地域において有意差はなかった。(2)DSRS-Cのcutoff scoreを16点とすると、16点以上の抑うつ群は全体の13.0%(小学生7.8%:中学生22.8%)であり、諸外国の報告と比べて高い値であった。抑うつ群は、小学校低学年では性差はないが、男子においては中学1年から、女子においては小学6年から増加しはじめ、女子が男子よりも著しい増加傾向を示していた。(3)因子分析を行った結果、2因子が抽出され、第1因子は「楽しみの減退」、第2因子は「抑うつ・悲哀感」と解釈された。この2因子はDSM-IVの大うつ病エピソードの主症状として取り上げられているものであり、児童・青年期の抑うつ症状と成人の大うつ病エピソードの症状との近似性が示唆された。(4)自殺念慮が存在する小・中学生は、「ときどき」と「いつも」を合わせると17.9%に認められ、「いつも」は4.0%であった。この値は、欧米の報告と概ね同じ値であった。 以上の結果から、わが国の小・中学生の中に抑うつ症状をもつ子どもたちが少なからず存在すること、さらには欧米の報告と同じ程度に大うつ病性障害が存在する可能性が示唆された。
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