研究概要 |
アダプター蛋白(AP)複合体は、clathrinと共にポストゴルジネットワークを構成する輸送小胞の代表的な被覆蛋白である。AP複合体のうち神経細胞特異的なAP-3Bはシナプス小胞の形成や神経伝達物質のシナプス小胞への選択的な取り込みを制御している可能性が示唆されている。AP-3B特異的なサブユニットであるμ3Bのノックアウトマウスは生後15週齡以降にけいれん発作を反復してんかんモデルと見なされている。平成15年度は,生後発達期のμ3Bノックアウトマウスの海馬における興奮性および抑制性終末の形態学的変化ならびに神経伝達物質遊離の変動を明らかにする目的で、μ3Bノックアウトマウス(KO)およびwild typeマウス(WT)を用い、生後2,4,6,8,16週齡において免疫組織化学的ならびに定量形態的検討を行った。 その結果、いずれの週齡でも通常の光顕観察では異常を認めなかった.電顕的に興奮性および抑制性終末の大きさ自体にはKOとWTの間で差は認められなかったが、興奮性終末のシナプス小胞の直径は、4、6、8週齡ではKOの方が小さく、16週齡ではKOの方が大きかった。一方、抑制性終末のシナプス小胞の直径は、いずれの週齡でもKOの方が小さかった。さらに、KOではいずれの週齡でも興奮性および抑制性終末1個あたりのシナプス小胞の数も少なかった。 以上の結果から、本モデルではAP3B機能欠損によって小胞形成に障害が生じ、嗅内野皮質から海馬CA1への興奮性と抑制性入力の不均衡がけいれんを惹起している可能性が示唆された。
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