研究概要 |
昨年度までの研究で、マウスに不安惹起作用のあるFG7142あるいはyohimbineの腹腔内投与、さらに拘束ストレス負荷といった3種類の処置によって、同様に、マウス大脳皮質における遺伝子発現量が統計学的に有意に増加する遺伝子が3種類(BTG2,CCN1,ADAMTS1)あることを明らかにした。今年度の研究では、このFG7142投与による遺伝子発現量増加が、ベンゾジアゼピン受容体の拮抗薬であるflumazenilによって、完全に抑制されることを確認した。また、BTG2が属するPC3/BTG/TOB遺伝子ファミリーのその他の4種類の遺伝子についても、FG7142投与の影響を調べたが、全く変化はみられなかった。上述のmRNAの定量には、定量的リアルタイムPCR法を用い、その標準化には、glyceraldebyde-3-phosphate dehydrogenaseを用いた。BTG2タンパクに対する特異的ポリクローナル抗体の作成に着手し、その定性を固相酵素免疫検定法とウエスタンブロット法によって確認し、培養細胞あるいはマウス脳の切片を用いて、免疫組織学的研究を遂行している。また、ヒトBTG2遺伝子のDNA解析を、PCRおよびダイレクトシークエンス法を用いて行い、6種類のsingle nucleotide polymolphism (SNP)が存在することを確認した。現在、精神疾患患者の末梢血から抽出したDNAを用いて、BTG2遺伝子の相関研究を遂行している。
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