研究概要 |
神経ステロイド・アロプレグナノロン(ALLO)生合成系障害の病態モデルとして隔離飼育ストレス(IS)負荷動物を用い,GABA神経機能調節及び神経精神性のストレス病態発現における内因性ALLOの役割を解明することを目的に,本研究を行った。 先ず,ALLOの生理的役割を行動薬理学的に明らかにするために,GABA受容体拮抗薬ピクロトキシン誘発痙攣に対する感受性の変化を指標に,IS負荷とALLO生合成阻害薬SKF105111(SKF)処置の影響を比較検討した。IS負荷及びSKF処置によりピクロトキシン誘発痙攣の閾値が低下したが,グリシン拮抗薬ストリキニーネ及びグルタミン酸受容体作動薬カイニン酸誘発の痙攣閾値に変化はなかった。IS負荷及びSKF処置の効果は,痙攣閾値に影響しない用量のALLOにより消失した。我々は既にIS負荷で脳内ALLO量が低下することを報告している。従って内在性ALLOはGABA-A受容体機能を上方性制御し,痙攣感受性を抑制していることが示唆された。次にGABA-A受容体機能調節におけるALLOの生理的役割を電気生理学的に検討するために,内在性ALLO量を低下させたマウス脳組織標本におけるGABA-A受容体機能をパッチクランプ法で解析した。SKF投与の3時間後,脳内ALLO量は正常の約20〜30%程度に低下した。SKF処置動物皮質錐体細胞のGABA電流応答を解析した結果,GABAの作用強度は対照標本よりも有意に低下していた。in vitroでSKF処置した脳切片でも同様の低下が認められた。またSKF処置によりGABA作動性抑制性シナプス後電流のうち,fast componentが減少し,電荷移動量が低下した。これらから内在性ALLOはGABA-A受容体上の特異的認識部位を介してGABA作動性IPSCを増強していることが明らかとなった。
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