平成15-16年度に行った遺伝性てんかんモデル(NER; Noda Epileptic Rat)の基礎データからは、神経発達の異常、とくに生後の発達段階におけるneurogenesisとapoptosisのマーカーの発現が異なることが、海馬の組織学的検索でわかり、これを受けて平成17年度は、BDNFやBDNFと協調的な役割を持つセロトニン(5-HT)の関与を検討した。また、NPY神経細胞の機能をみるために、NPYと協調する神経系に注目し、臨床研究に応用を見込めるような動物実験系の確立を模索した。 体温は臨床研究も多い生理学的指標である。5-HT神経終末が投射し、体内リズムを制御する神経核が集中する視床下部において、NPY細胞は重要な役割を持つ。本年度は、ラットを用いて埋め込み型体温センサー(4.2g)と赤外線センサーによる運動量測定システムを用いて活動・体温リズムを求める実験系を確立した。このシステムで、5-HT前駆物質(5-HTP; 5-hydroxytryptophan)を投与したところ、5-HTP投与によって体温低下と約一時間のリズムの位相変化が認められた。 また、2つ目の指標はneurogenesis/apoptosisで、本年度はapoptosisが核蛋白のヒストン修飾によって影響を受けること(代表者の行ったprimary cultureの研究より)に注目し、てんかん原性の現象的基盤を探った。バルプロ酸は小児・妊婦にも投与される重要な抗てんかん薬であるが、ヒストン・アセチル化を誘導することが示されている。神経構築が生後に完成するラット新生児小脳を対象に、バルプロ酸の腹腔内投与を行ったところ、apoptosisが外顆粒細胞層に著明に誘導されることがわかった。今後はてんかんモデルを用いて、てんかん原性やてんかん脳の萎縮性変化への関与を検討したいと考えている。
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