研究概要 |
我々は遺伝性てんかんモデルのnoda epileptic rat(NER)を用いて、海馬における組織学的変化を中心に検討した。NERは複数の遺伝子異常と環境からの刺激によりてんかんを発症する遺伝性てんかんモデルである。15週令ではほとんどすべての個体がてんかん発作を有するため、これを用いた。NERではKi67,NeuroD,p-Histone H3陽性細胞が対照群ラットに比べて著しく低下しており、BDNF/trkBのmRNAの発現をin situ RT-PCRにて検討したところ、NERのCA3中心に著しく低下していた。NERでは生後の海馬における細胞新生の低下やBDNF/trkBの活性低下が示唆される。この成果はさらに詳細に検討して報告したい。 海馬の遺伝子発現においては、サーカディアンリズムの影響も考えられる。我々は海馬においてサーカディアンリズムによるアポトーシス関連遺伝子の発現の変化について検討した。6ヶ月齢のラット海馬歯状回において、コルチコステロンの急性投与によるbc1-2/bax mRNA ratioの変化についてin situ RT-PCRにて調べた。その結果、light phaseの始まりでは著しい低下が見られたのに対し、dark phaseの始まりでは変化が認められなかった。海馬はストレス反応にも深く関わっており、グルココルチコイド受容体の発現量やステロイドホルモン量は日内変動を示すことはよく知られている。この研究では我々はアダルトラットにおいて、サーカディアンリズムがbc1-2/bax遺伝子の発現に大きな影響を及ぼす可能性を示唆した。
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