研究概要 |
本研究は、反復的経頭蓋磁気刺激(rTMS)治療に用いる、具体的な最適刺激条件(刺激強度、刺激部位、刺激周波数・頻度・回数)を、神経生理学的機能画像、脳機能測定・解析法から決定するとともに、当該治療法の作用機作の解明を目指している。平成15年度の主な研究実績は下記のとおりである。 1)体性感覚誘発電位(SEP)の高周波振動HFOs(high frequency oscillations)の変化を指標として、健常者の体性感覚野に与えた低頻度のrTMS(0.5Hz、50回、運動誘発閾値の80%強度)が、皮質興奮性に与える影響について検討したところ、SEPには変化を認めない一方、HFOsの有意な増強を認めた。HFOsは皮質内GABA系抑制性介在ニューロンの活動を反映すると考えられているので、低頻度rTMSがもたらす皮質興奮性の抑制は、抑制性介在ニューロンの作用の増大を通して行われている可能性が示唆された。また、HFOsの変化が実際の刺激時間に比較して長時間にわたって認められたので、HFOsがrTMSの最適刺激条件を検討する際の客観的な指標になりえることが示された。(Ogawa et al.,Neuroscience Letters, in press) 2)視床痛などの求心路遮断痛に対するrTMSを用いた治療を大阪大学医学部倫理委員会の承認を得て施行中であるが、患側の第1次運動野に与えたrTMS(1Hz、または10Hz)の治療前後でのMEG、EEG、SPECT、認知機能の変化、さらにrTMSの刺激直前・直後のEEGの変化について、特に脳機能画像的解析手法を用いて検討している。
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