研究概要 |
本年度は,非定型アルツハイマー病,特に最近注目されているcotton wool plaqueを有するアルツハイマー病に着目し,神経病理学的な検討を行った.cotton wool plaqueを有するアルツハイマー病では,βアミロイド蛋白が直接的に神経細胞障害を引き起こしている可能性が指摘されており,また,臨床症状も痙性対麻痺を呈することが多いなど,一般的なアルツハイマー病と比べるとやや特異な点が注目されている. 今までに報告されているcotton wool plaqueを有するアルツハイマー病は,その殆どが常染色体優性遺伝を呈する家族性アルツハイマー病の家系であった.しかし,弧発例でも,cotton wool plaqueを有するアルツハイマー病が存在することに気付き,4例を見出した.そして,その4例の臨床症状を検討すると,必ずしも痙性対麻痺を呈する例ばかりではないことがわかり,これら4例に関する臨床病理学的な検討を行った.そして,cotton wool plaqueを有するアルツハイマー病と一口に言っても,臨床上も病理上もかなり多様性を有する群であることを,詳細な免疫組織学的な検討とともに報告した(Acta Neuropathologica 106(4):348-356).cotton wool plaqueを有するアルツハイマー病の弧発例を4例もまとめて報告したのは世界的に見ても初めてであり,また,臨床病理学的な多様性を指摘したことも重要である.基礎的な研究ではあるが,大きな貢献をしたものと自負している.
|