研究概要 |
既に昨年度,cotton wool plaque(CWP)を有する非定型アルツハイマー病と定型アルツハイマー病とを比較すると,cyclooxygenase-2(COX-2)の染色性が大きく異なることを報告した.具体的には,CWPを有する非定型アルツハイマー病の海馬では,定型アルツハイマー病と比較すると,COX-2の染色性は非常に弱いものであった.そこで本年度は,年度当初の研究実施計画に述べたとおり,COX-2に関する研究をさらに進めて,正常コントロールとアルツハイマー病,さらには統合失調症をも含めて,COX-2の染色性を比較検討した.これは,COX-2を抑制する薬物が統合失調症の治療薬として有望との報告があることを踏まえた研究である.正常コントロールと比較した場合,アルツハイマー病の海馬では,COX-2の免疫染色性が増強していたが,統合失調症の海馬では正常コントロールとは有意差が認められない,という結果であった. また,以上の研究とは別に,アルツハイマー病と石灰化を伴う瀰漫性神経原線維変化病(DNTC)との比較検討の一環として,タウ蛋白のエクソン3に対する抗体を用いて,アルツハイマー病とDNTCも含めた,様々なタウオパチーに関する免疫組織学的な検討も行っている.タウ蛋白のエクソン10に関しては,既に幾つかの報告がなされているが,エクソン3に関する報告は非常に限られたものしかなく,詳細な検討はほとんど行われていない.エクソン3に関する興味深い結果が得られつつあるのが現状である.
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