研究概要 |
1.初年度は,cotton wool plaque (CWP)を有するアルツハイマー病(AD)に着目し,臨床神経病理学的検討を行った.CWPを有するADは,その殆どが常染色体優性遺伝を呈する家族性ADであるが,我々は4例の弧発例を見出した.そして臨床病理学的検討により,CWPを有するADにも,多様性が存在することを報告した. 2.2年目は,正常コントロール(Cont)とAD,さらには統合失調症(Sc)をも含めて,COX-2の染色性を比較検討した.Contと比較した場合,AD海馬では,COX-2の免疫染色性が増強していたが,Sc海馬ではContと有意差が認められず,COX-2抑制薬物のScへの治療効果発現は,COX-2以外を介する経路による可能性が示唆された. 3.最終年度は,ADと石灰化を伴う瀰漫性神経原線維変化病(DNTC)との比較検討の一環として,タウ蛋白のexon-3に対する抗体を用いて,免疫組織学的な検討を行った.ADやDNTCでは,大部分の神経原線維変化(NFT)がexon-3陽性.Pick小体病ではPick球の大部分はexon-3陽性であったが,グリア内封入体はexon-3陰性であった.進行性核上性麻痺(PSP)ではNFTはexon-3陽性,tuft-shaped astrocytesやcoiled bodies (CB)もAT-8に比べ軽度ではあるがexon-3陽性であった.皮質基底核変性症(CBD)ではpretangleやNFTはexon-3陽性,さらに僅かではあるがCBやthreadsもexon-3陽性であった.結論として,抗exon-3抗体による免疫染色によりCBDとPSPとを区別することは困難であること,およびグリア内にも微量ではあるが,exon-3を有するタウ蛋白が発現していることが明かとなった.
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