研究課題
基盤研究(C)
本研究では、ストレスを経験したラットを再度その環境に暴露することで起こると考えられる情動ストレスについて中枢神経系の各部位での神経活動を細胞内転写調節因子であるFos蛋白を指標として免疫組織化学法を用いて観察し、情動やストレスに関与すると考えられている部位のグルタミン酸受容体のサブユニットやリン酸化の変化を観察した。1)条件付けには電撃ストレスを用いる。ショック箱にて電撃ショックを負荷し、負荷後3日目にショックを与えた箱内にラットを移動することで情動ストレスとする。動物の情動ストレスの指標にすくみ行動や脱糞等の行動観察を行う。2)免疫組織化学法を用い、Fos蛋白の発現を形態学的に観察した。Fos発現は、電撃ストレス及び情動ストレスにより前頭前野(PFC)、視床下部室傍核(PVN)、背側縫線核(DR)、脚橋被蓋核(PPTg)、橋背外側被蓋核(LDTg)、青斑核(LC)において対照群に比べ有意に増加したが、側坐核(NAC)、扁桃体(AMY)、腹側被蓋野(VTA)、黒質(SN)では対照群との有意差を認めなかった。3)電撃ストレス負荷によりPFC、PVN、DR、PPTg、LCにおいて、Fos陽性細胞の約40〜50%のGABA及びNMDA受容体サブタイプ1陽性細胞が活性化されており、抑制系神経細胞の活性化及びグルタミン酸作動性神経投射による機能修飾の可能性が考えられた。4)神経性一酸化窒素合成酵素(nNOS+)/Fos+陽性細胞の活性化は、脳内各部位においてばらつきが認められた。その程度はPVNにおいて比較的高く認められ、ストレス負荷時の自律神経系の関与も考えられた。5)ドーパミン神経核であるVTA、SNにおいてFos発現が非常に少なく、比較的多くのFos発現が認められたノルアドレナリン神経核(LC)、セロトニン神経核(DR)との分布差が明らかとなった。これらはラットの系統による発現の差異があり、ストレス実験に用いるラットの系統の選択も重要と考えられた。6)オキシトシン、バソプレッシン陽性細胞は、共にPVNにおいて約40〜50%が活性化されていた。7)アセチルコリン神経核であるPPTg、LDTgにおいては、コリンアセチルトランスフェラーゼ陽性細胞の約5%が活性化されていた。8)種々のグルタミン酸受容体、リン酸化グルタミン酸受容体の各部位におけるタンパク量をWestern blotting法を用いて解析した。ストレス負荷後30分におけるグルタミン酸受容体のサブユニットの変化は各群間で変化を認めなかった。経時的な変化に関しては今後の検討課題であり、現在、1時間、2時間、24時間後、48時間後などを設定し、サブユニットのタンパク量の変化を検討したいと考えている。リン酸化に関しては検出も出来ず、抗体や免疫沈降法などの手技的な検討を行っており、引き続き研究を継続中である。
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