研究概要 |
1.脳での転写活性能保持型内在性レトロウイルス(HERV)の探索と同定 データベースの包括的探索法を確立し、約465万個のESTのうち脳関連組織のmRNAから作製されたEST約44万個を選別し、12ローカスを期待できるものとして抽出した。このデスクワークの結果を(胎児)脳から抽出したRNAを用いてベンチワークによる検証を行った。その結果、HERVK9やMER61AなどのHERV配列をもつ5つのローカス(3p22.1,5p15.3,4p16.3,4q31.3)が、脳での潜在的転写活性能をもつものとして新たに同定された。これらのうち、予測されたローカスと一致しなかったものが1つあった。 ここまでの作業を経て、データベースの包括的探索法は確立されたが、そのあとのベンチワークにかなりの労力及び時間を要することが問題として残った。マイクロアレイのようなパワフルな技術の導入が不可欠と思われる。 2.それらによる近傍遺伝子の発現制御への干渉のin vitroの系での検証 前年度の実験より、SYN3-exon13のアンチセンスRNAによる転写後発現抑制(PTGS)効果を確認している。今年度は、HERV-Hからのread-through転写物の存在とその効果を確認することが課題であった。この目的への第一歩となるコンストラクト作製で種々のトラブルを経験し時間がかかったが、最終的に、3種のコンストラクトを作製することができた。発現ベクターpGL3-basicに、HERVH3'LTRからSYN3遺伝子のエクソン13までのゲノム配列(5.7kb)を挿入したもの、SYN3のエクソン13を含まないもの(5.2kb)及びエクソン13を逆向き(即ち、SYN3 mRNAと同じセンスストランドのエクソン13RNA配列を持つことになる)に挿入したもの(5.2kb)の3種である。現時点ではここまで、戦力不足を露呈する結果となった。
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