今回われわれは、インフォームドコンセントを得られた統合失調症の患者12人を対象に非定型抗精神病薬olanzapineを代謝するといわれる肝臓の酵素P450の2つのアイソザイムであるCYP1A2とCYP2D6に着目し、この酵素の活性とolanzapineの血中濃度との相関を検討し、さらには高血糖や体重増加といった副作用発現との相関についても調査した。その結果CYP1A2とCYP2D6の酵素活性において、その欠損または低活性を示す遣伝子型(CYP1A2*1CまたはCYP2D6*10/*10)を示す症例については、予測血中濃度(投与量10mg/dayで28.1±9.4ng/ml;投与量に比例的)を超え、40ng/ml近くに達する例が4例中3例あった。その一方で、遺伝子的には代謝酵素活性が正常と予測される症例については、この予測値を超える症例は8例中1例であった。また、血糖値変化および3kg以上の体重増加といった副作用に関しては、高olanzapine血中濃度4例中それぞれ2例と1例見られたが、低olanzapine血中濃度の8症例中では血糖値変化例は1例、体重増加例が3症例見られた。これらのことからは、olanzapinenの血中濃度にはその主要代観酵素のCYP1A2とCYP2D6の活性が影響するのではないかと思われるが、必ずしも高血糖や特に体重増加といった副作用とolanzapineの血中濃度が相関するとば言えなかった。
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