研究概要 |
1)向精神薬におけるテーラーメイド医療 向精神薬における神経薬理学的薬物代謝の解析とテーラーメイド医療推進の一助として、現在の医薬品の大部分を代謝している酵素群CYPIA2,2A6,2C19,2D6の遺伝子解析を行った。倫理委員会で承認後、インフォームドコンセントの得られた精神科領域の患者を対象に、向精神薬による副作用と薬物依存の発症機序を調査した。その結果、統合失調症の主要な治療薬オランザピンの高血中濃度や副作用である高血糖出現の脆弱性に、共通の代謝酵素CYPIA2(遺伝子多型*1C,*1F)よりCYP2D6の酵素活性が影響することを明らかにした。薬物代謝能、薬物問相互作用などの臨床薬理遺伝学知見を副作用が出やすい向精神薬の薬物療法に導入することにより、患者個々の薬物の血中濃度を予測し、個人にあった安全性の高い処方を行うテーラーメイド処方で、薬の治療効果を高めるサービスを目指している。 2)薬物依存形成の機序に関する研究 薬物依存形成の機序に関する研究で、喫煙についてはニコチン代謝酵素CYP2A6の低活性を示す*4C遺伝子が喫煙行動の抑制因子となる可能性を示した。現在覚醒剤を含む薬物依存形成機序解明の一助として、CYP系の代謝酵素群の活性や脳内の嗜好に関与するセロトニンなどの神経伝達物質とその受容体との関連について遺伝子レベルで調査している。
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