本年度の研究実績概要 (1)検体の収集:統合失調症は約800名、双極性障害は200名の収集を行った。共同研究施設との連携で統合失調症は1000名以上、双極性障害についても500名以上のサンプルが収集され十分な数に至った。Family-basedの解析が行えるよう、患者及び両親のtriadも約100組収集した。薬剤反応性の評価は非定型抗精神病薬リスペリドンの反応性について約100例、SSRIフルボキサミンの反応性についても約100名の収集を行った。 (2)神経伝達物質受容体遺伝子多型検索と同定:変異検索・同定については既知の5-HT受容体全てのサブタイプについて完了した。GABA受容体遺伝子について5番染色体クラスタでの1Mbを網羅的に検索できる方法を確立した。 (3)上記から得られた変異を用いて日本人集団での該当領域での詳細な連鎖不平衡地図を作製した。この情報をもとに統合失調症、双極性障害、覚醒剤精神病患者での連鎖不平衡関連解析を行った。この中でGABA受容体α1サブユニットと統合失調症の関連を見出した。真の疾患感受性変異同定とその病態生理解明に向けて今後も検討を加えていく。 (4)統合失調症との関連が報告されている候補遺伝子アプローチとしては、SLC1A2、TNF-α、AKT1、NGR1、BDNF、dysbindin、chimerin 2、ZDHHC8について我々のサンプルを用いて再検討した結果、NRG1とTNF-αについては日本人統合失調症患者との関連は否定的であったが、AKT1、chimerin 2についてはH統合失調症患者との有意な関連を見いだした。 (5)覚醒剤使用障害患者での関連遺伝子検索では基礎研究グループから提案されたメタアンフェタミン依存に関与する遺伝子群を網羅的に検索した。この中でErbB1との関連を示唆する結果を得たので今後さらに検討を加えていく。
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