研究概要 |
我々はこれまで、能面画像をコンピュータに取り込み、表情認知実験できるようにシステム化してきた。能面テストを用いて表情認知能力を測定することで、健常者の性格傾向などを調査し、学会発表をし、統合失調症患者の4年後の就労状況を70%以上予測でき、論文発表を行った。 今年度は、DV被害を受けた母子に対して能面テストを実施し、彼らの表情認知の傾向を比較検討した。 目的:DV被害を受けた母子の表情認知の傾向はゆがめられているのか、ゆがめられているとするとどのように介入ができるのかを調査する。 方法:DV被害をうけた母子のカウンセリングを個別に月2回のペースで実施する。カウンセリングの効果判定として、また母子関係の観察、子育て支援のために6ヶ月に1回の母子合同面接を実施する。能面テストは母子合同面接の直後に行い、実験後その場で母子の表情認知傾向の結果を説明し、日常生活や母子関係の改善のための助言の材料とする。 結果:1,虐待のタイプのネグレクトの児童は表情認知能力が標準と比較してきわめて高く、一方でその母親は非常に低い傾向が認められた(1事例のみではあるが)。 2,身体的、言語的な軽い虐待を繰り返す母親の場合、母子ともに表情認知能力は低下する傾向がみられたが、児童はやや表情認知能力が維持され、母親の表情認知のゆがみが認められた(3事例)。 3,定期的な実験結果により、母子関係の改善のための助言を与えることができ、改善状況が母子の表情認知能力の接近(高すぎる児童も低すぎる母親も標準に近づく)が観察された。
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