研究概要 |
気分障害の研究としてマウスの強制水泳テスト、尾懸垂テストの無動時間を規定している遺伝子座位をQTLの方法を用いて探索した。その結果、無動時間を支配する遺伝子座は、マウス染色体4番、6番、8番、11番、14番、17番に存在することが判明した。これらのうち8番、11番の座位は両テストで共通することが分かった。(Genome Research 12:357-366,2002)。 1.in silico探索による候補遺伝子の選定 マウスデーターベースからこれらの染色体の候補遺伝子とヒトとの相同を検索した結果、特に11番染色体のマーカー「D11Mit271」付近はヒト染色体5q32-q35に相当し、この領域は躁うつ病や不安障害で連鎖が報告されており、GABAレセプターのサブユニット、α1,α6,β2,γ1がコードされている。これらの遺伝子の発現をC57BL/6、C3H/Heの両系統で検討した結果、前頭葉においてα1 geneがC57BL/6マウスにおいてC3H/Heと比較して有意に減少していた。 2.DNAマイクロアレイからのアプローチ AffymetrixのGene Chipを用いてC3H/HeとC57BL/6マウス、両系統の前頭葉で発現レベルが有意に異なる遺伝子群を網羅的に調べた。QTLというポジショナルインフォーメーションと脳部位特異的遺伝子発現の系統間差異情報を組み合わせることにより、遺伝子をより絞れる可能性がある。Cap1,Cd52,Casp9,Gnb1,Hook2,Nfix,Mitf2,Itm2b geneが候補遺伝子としてリストアップされた。さらにRT-PCRで発現を確認した結果Cap1,Cd52,Casp9,Gnb1 geneがC3H/Heマウス前頭葉においてC57BL/6のそれより2倍以上の発現を示した。
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