研究概要 |
自己由来生体外増殖巨核球を用いた放射線誘発血小板減少症に対する治療法の開発のため,放射線曝露ヒト造血幹細胞からの巨核球・血小板の再生・誘導に関する本年度の研究から以下の点が明らかとなった. 1.ヒト末梢血に含まれるCD34^+細胞巨核球前駆細胞(CFU-Meg)の放射線感受性を比べると,CD34^<high>細胞がCD34^<low>細胞に比べトロンボポエチン(TPO)単独及びTPOと顆粒球コロニー刺激因子存在下での放射線感受性は高いが,TPO+インターロイキン-3(IL-3)では差がなかった.この事はCD34^+細胞の分化度に依存し,特にTPO受容体発現の差が関与している可能性が示唆された. 2.末梢血CD34^+細胞から産生された成熟巨核球は放射線感受性が高いが,照射後のpro-platelet formationはほぼ正常に起こる事から,血小板造血の最終過程での放射線の影響は小さい可能性が示唆された. 3.緑茶由来エピガロカテキンガレートは,100nMという低濃度で放射線曝露ヒト造血幹細胞からのTPO刺激巨核球・血小板造血を有意に促進し,放射線障害軽減への応用の可能性が示唆された. 4.重粒子線は,ヒト巨核球前駆細胞に対しX線よりさらに強い障害をもたらし,その障害軽減・回復はサイトカインに依存しない.X線及び重粒子線照射CD34^+細胞で観察されるサイトカインの作用の差は,DNA損傷修復に対する作用の差も一因である可能性が示唆された.重粒子線照射造血幹細胞からの巨核球造血の回復には,IL-3,Stem cell factor及びTPOなどX線の場合に比べより多くのサイトカインを必要とした. 5.X線曝露ヒト造血幹細胞からの巨核球・血小板造血において,TPOとIL-3の組み合わせが最も強い造血の再生・誘導を支持した.放射線曝露造血幹細胞から巨核球系への分化増殖ならびに成熟巨核球から血小板産生を正常に近い状態で再生誘導出来る可能性が示唆された.
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