研究概要 |
放射線照射効果に影響を与える腫瘍の低酸素状態の意義と治療効果への影響を明らかにすることを目的とした.特に,31P-MRSや低酸素紳胞マーカーなどにより測定される腫瘍の低酸素状態と,HIF-1など低酸素関連因子およびp53など腫瘍側のシグナル伝達系を解析する事を目的とした. まずマウス実験腫瘍を用いて,低酸素分画の定量化を種々の方法で試み,比較を行った.酸素濃度測定用電極や31P-MRSを用いた方法では測定できる腫瘍の大きさに限界があった.アイソトープ標識したβ-D-IAZGPの投与により低酸素細胞分画の評価を行った結果,24時間後に腫瘍に特異的な集積が静められ,腫瘍内の低酸素細胞マーカーの取り込みは血液の約8倍を示した.種々の大きさの腫瘍で,薬剤の取り込みについて見ると,大きな腫瘍は低酸素細胞マーカーの取り込みが有意に高く,有用性が高いと考えられた. 低酸素と放射線治療効果については,まず子宮頸部扁平上皮癌の治療前生検組織を用いて,低酸素で誘導される腫瘍内HIF-1の発現を検討した.HIF-1発現の有無により5年非再発生存率に有意な差が帯められた.特に遠隔転移率において強い相関が認められ,HIF-1の発現が子宮頸癌の悪性度と相関すると考えられた.次に,食道癌の化学放射線療法におけるHIF-1,p53,p21の治療効果への影響を検討した.初期治療効果ともっとも良く相関した因子はHIF-1であり,HIF-1が高発現した腫瘍は有意に治療効果が不良であった.p53,p21の発現パターンによって初期効果に差が認められた.HIF-1,p53,p21の3者の陽性率をスコア化し,初期効果との関係を検討した結果,高スコア群(p53陰性,p21陽性,HIF-1陰性)群は,有意に初期効果が良好であり,約60%において腫瘍の消失が認められ有用な予後因子となると考えられた.
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