研究課題
基盤研究(C)
最新の機能的画像研究では前部帯状回、その他の大脳辺縁系および前頭前野からなる神経回路網が心的外傷後ストレス症候群(posttraumatic stress disorder:PTSD)の病因として重要であることが示唆されてきた。しかしこれまでこれらの領域を結ぶ白質線維に対しては大きな関心が払われてこなかった。Statistical parametric mappingを用いたボクセル単位の解析では、全脳の機能的・形態的変化を客観1的に評価することが可能である。本研究でわれわれはこの手法をPTSD症例の拡散テンソル解析にはじめて応用した。対象は地下鉄サリン事件被害者のうち、PTSDを発症した9名と、年齢性別をマッチさせたPTSDを発症しなかった16名である。SPMによる解析では左帯状束における有意な拡散異方性(fractional anisotropy:FA)の上昇が観測され、この部分はわれわれが以前に報告した同一症例群におけるPTSD症例で容積低下が見られた左帯状回直下に存在した。さらに空間的正規化の逆変換を用いることで有意な群間差を示したボクセル群を各症例自身の空間座標系に変形したものを関心領域としてFA値を計測したところ、PTSDの重篤度を示すCAPS(clinician-administered PTSD scale)と弱い正相関を示していた。これらの結果はPTSD発症機序としての前部帯状回および帯状束の重要性を示す、さらなるエビデンスとなると考えられた。さらに機能的MRIの手法を用いたPTSD研究では帯状回における機能低下のために、情動・感情を制御する神経回路網の一部である扁桃体の代償性易興奮性が報告されており、この研究で示されたFA上昇は帯状束の機能低下を補うために神経線維統合が再構築された可能性を示すものと考えられた。
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Psychiatry Res Neuroimaging (In press)
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