| 研究概要 |
磁気共鳴診断装置(MRI)を使用して,頭蓋内コンプライアンスの非侵襲的な定量解析を行い,正常圧水頭症例を中心に検討した.最初に,phase-contrast cine MRIで得た大後頭孔レベルの髄液流量波形と動静脈血流量波形から,心時相における頭蓋腔内の正味の容積変化を算出した.次に,ナビエ-ストークス方程式によって髄液流量波形から圧力勾配を算出した.これらから最大容積変化と最大圧力勾配変化の比を求め,頭蓋内コンプライアンスの指標(ICCI : intracranial compliance index)とした.本年度は,ICCIの値を求めることに成功したので,正常圧水頭症例,無症候性脳室拡大または脳萎縮例,正常例の各々数例について比較した.さらにDiamox負荷前後の変化についても検討を行った.
その結果,ICCIの値は,無症候性脳室拡大または脳萎縮例および正常例と比較して,正常圧水頭症例の方が有意に小さかった.これは,侵襲的に頭蓋内コンプライアンスを測定する報告と一致していた.一方,無症候性脳室拡大または脳萎縮例と正常例のICCIの値は,有意な差が認められなかった.ダイアモックス負荷についは,頭蓋腔最大容積変化と最大圧力勾配変化は負荷後に各々有意に低下したが,ICCIの値は有意な変化が認められなかった.これは,ICCIの値が血流動感と独立しており,頭蓋内固有の力学的特性が求められることを示唆している.
来年度以降は,さらにICCIの測定精度を上げるために様々な補正法を試みるとともに,プログラムを向上させて解析の自動化を推し進める.さらに,症例の検討を重ねながら,侵襲的コンプライアンス測定(圧容積反応測定)との対比や,頭蓋腔容積変化-髄液流量伝達関数から算出した時定数解析との比較を行う予定である.
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