研究概要 |
昨年度は,磁気共鳴診断装置(MRI)による頭蓋内コンプライアンスの非侵襲的な定量解析法(ICCI:intracranial compliance indexによる解析)を開発して,正常圧水頭症例を中心に検討した結果,本手法の有用性を明らかにした.本年度は,さらにICCIの測定精度を向上させるために,.頭蓋腔と脊髄腔の境界における脊髄移動量を利用した時間流量測定データの補正法を開発するととともに,撮像条件の検討を行った.また,ICCIと侵襲的コンプライアンス測定(圧容積反応測定)との対比や,頭蓋腔容積変化-髄液流量伝達関数から算出した時定数解析との比較を行った. その結果,新たに開発した時間流量測定データの補正法によってICCIの測定誤差を7%改善できた.また,ICCIの値に影響を与える因子は,撮像時の心時相数,空間分解能,信号雑音比であることが判明し,それらの最適値が求められた.ICCIと圧容積反応測定値との間には強い正の相関が認められ,ICCIの値が頭蓋内コンプライアンスを表していることを実証した.ICCIと頭蓋腔容積変化-髄液流量伝達関数から算出した時定との間に正の相関が認められたが,正常圧水頭症例と無症候性脳室拡大または脳萎縮例との有意差は時定数よりもICCIの方が大きく,本法がより有用であることが判明した. 来年度は,これまでに構築したICCI測定のための各種アルゴリズムを統合し,プログラムの完全自動化を図る.また,さらに症例を重ねて詳細に検討し,本解析法の有用性を国際学会において報告するとともに,論文投稿する予定である.
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