研究概要 |
昨年度は,MRIによって測定したintracranial compliance index (ICCI)の測定精度を向上させるために,頭蓋腔と脊髄腔の境界における脊髄移動量を利用した時間流量測定データの補正法を開発するととともに,撮像条件の検討を行った.また,ICCIと侵襲的コンプライアンス測定(圧容積反応測定)との対比や,頭蓋腔容積変化-髄液流量伝達関数から算出した時定数解析との比較を行った.これらから本測定法の正当性が裏付けられたため,本年度は,ICCI算出プログラムの自動化を進め,正常圧水頭症の中でも先行疾患がないために鑑別診断が困難とされる突発性正常圧水頭症例を中心に検討を行った.さらに,ICCIが大脳白質における水分子の拡散に与える影響も検討した. 突発性正常圧水頭症群のICCIは,健常群や脳萎縮または無症候性脳室拡大群よりも有意に低下していた.また,突発性正常圧水頭症の侵襲的検査の中でゴールドスタンダードであるタップテストの結果と,ICCIの変化は極めてよく一致していた.さらに,ICCI算出の基になっている心時相における頭蓋内容積変化(正味の頭蓋腔容積負荷)と,心時相における白質内の水分子拡散の指標(ADCおよびFA)の変化が一定の関係にあり,コンプライアンスが白質内水分子の拡散に影響していることも明らかにした. 以上より,MRIを用いて頭蓋内コンプライアンス(ICCI)を解析することによって,頭蓋内環境を非侵襲的かつ正確に評価することを可能とし,突発性正常圧水頭症を中心とした水頭症の病態解析や補助診断怯として有用であると結論付けた. これらの成果は,論文報告し(裏面参照),2005年Japanese Radiology Congressにおいては大会長賞を受賞した.また,2005年北米放射線医学会で報告し,別刷りの依頼を多数受けた.
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