研究概要 |
まず、画質向上を図る為に静磁場強度が1.5T、3TのMRI装置双方にparallel imaging法と頭部専用高感度受信コイルを導入した。これにより双方とも歪みの少ない良好な拡散テンソル画像の撮影が可能となり、3TのMRIが本来持っている高い高磁場特性による高い信号・雑音比を持った画像がより有効に利用できるようになった。 次いで、30名の正常ボランティアの拡散テンソル画像撮影を行った。画像解析はJohns Hopkins大のMoriらが開発した拡散テンソル画像解析及び白質神経束描出(tractography)用のソフトウェアDTI Studioを用いた。3TのMRIが本来持っている高い高磁場特性による高い信号・雑音比を持った画像がtractographyにおいても有効であり1.5Tと比べて多くの線維束の描出能が高いことを世界で初めて証明し、Radiology誌(Radiology,2006;238:668-678)に発表した。また、副次的成果として、モヤモヤ病のMR angiographyにおいても3Tは1.5Tを凌駕することを証明した(Radiology,2006;239:232-237)。 拡散テンソルtractographyが実際に白質線維束の位置を正確に描出出来ているかの確証がまだ得られていなかったため、拡散テンソルtractographyのデータを、脳手術用ナビゲーター装置に取りこみ、実際の脳外科手術において電気生理学的所見(運動誘発電位:MEP)と対比した。その結果、拡散テンソルtractographyがほぼ正確に実際の神経線維束を描出していることを証明した。また、拡散テンソルtractographyと電気生理学的所見を相補的に用いることは安全な脳腫瘍手術への寄与が大きいことを見いだした。この成果についてもRadiology誌に掲載予定である。
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