温熱療法と放射線療法の併用による効果増強の機構を分子・遺伝子レベルで解析するため次の3点から検討を加えた。 1ヒト口腔癌細胞での癌抑制遺伝子p53の役割;実験に用いた12種類のヒト口腔癌細胞株のp53遺伝子はmutantであるためwild-p53遺伝子を組み込んだアデノウイルスにて細胞内に導入し、温熱・放射線感受性でのp53遺伝子の役割を検討した。Wild-p53遺伝子を細胞内に導入するといずれの細胞も温熱・放射線感受性が増感した。 2温熱により引き起こされる細胞死アポトーシス;pEYFP-Nuc vectorを用いて核仁に局在する黄色の蛍光を発するタンパク質(EYFP)を発現するJurkat-YN細胞株を樹立した。レーザー顕微鏡を使用してFasのより惹起されるJurkat-YN細胞のアポトーシスの核の変化を三次元的に経時的に観察した。EYFPによって見られる核の形態的変化は生体染色で見られる核の形態(SYT05)とほとんど同じであった。クロマチン凝縮前のアポトーシスで観察される核形態の三次元的変化が明きらかとなり、これらの変化はアポトーシスの初期の段階で形態的な変化をしていることを示した。 3温熱耐性の発現機構に関する研究 BHK21ハ細胞とtsAF8細胞を用いてprotein kinaseの阻害剤であるCalphostin CとH89の温熱耐性の発現に及ぼす効果を検討した。その結果、いずれの細胞においてもCalphostinCの温熱耐性の発現が阻害された。CalphostinCはPKCを特異的に阻害し、H89は主にPKCを阻害するが、濃度が高くなるとPKGも阻害する。温熱耐性の発現はPKCとPKAにより阻害される8が、PKGによって促進されることが示唆された。
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