研究概要 |
1.1999年から2004年の期間において塞栓術またはクリッピング術において治療を行った脳動脈瘤症例307例を対象に、治療成績を対比検討した.また、2.1999年4月から2004年11月の期間において回転DSA3次元再構成画像(3D-DSA)を施行後に,瘤内塞栓術を行った前交通脳動脈瘤症例28例を対象に,3D-DSA所見と塞栓術直後の瘤の閉塞率を対比検討した. 1.全動脈瘤におけるクリッピング術と塞栓術の比較.クリッピング術は226例,塞栓術は81例に施行された.入院時の重症度分類ではH&KG3以上の重症例はクリッピング群では25%,コイル群で32%とコイル群で重症度が高い傾向にあった.手技に伴う症候性合併症の頻度はクリッピング群では16.4%,コイル群で4.9%とクリッピングで高率に見られ,またクリッピング群における合併症の頻度は術者により4%から33%と大きく異なっていた.退院時または3月後の臨床転帰はmRS 3以上の予後不良例はクリッピング群では21%,コイル群で27%とコイル群で予後不良例がやや多い傾向にあったが,入院時重症度がG2以下の軽症例においては予後不良例はクリッピング群では9.4%,コイル群で9.1%と同等であった.術後(再)出血の頻度はクリッピング群では2.2%,コイル群で1.2%とほぼ同等であった.これらのことから脳動脈瘤におけるコイル,クリップの治療成績はほぼ同等であるが,クリッピングの成績は術者により左右されることが示唆された. 2.2.前交通動脈瘤の塞栓術による治療成績に影響を与える因子の解析.塞栓術直後の瘤の閉塞率は完全閉塞25%,ネック残存39%,不完全閉塞21%,不成功14%であった.χ^2検定では塞栓率に影響を与える因子として,ドームネック比、および術者の経験値(40例以上)が有意に相関していた.部位、最大径,動脈瘤の形状などの他の因子については有意差な相関は見られなかった.
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