研究概要 |
癌関連抗原を認識するモノクローナル抗体を放射性同位元素で標識したのち、生体内に投与して診断や治療を行う抗体シンチグラフィや放射免疫療法は、これまでに基礎的検討、臨床応用が進められてきた。本研究においては、抗HER2(human epidermal growth factor receptor type 2)ヒト化モノクローナル抗体による放射免疫療法を行うにあたって重要な要素について基礎的検討を行った。今年度は、重要な項目として、抗HER2抗体の標識について検討した。抗体の安定した標識には、その核種に適したキレートの開発が不可欠である。今回は、キレートとしてマクロサイクルである6-(4-isothiocyanatobenzyl)-5,7-dioxo-1,11-(carboxymethyl)-1,4,8,11-tetraazacyclotridecaneを合成した。これは、抗体を診断のためのTc-99m、放射免疫療法のためのRe-186、Re-188で標識するためのキレートである。diethyl malonate、lithium diisopropylamide、p-nitrobenzylbromideを元にして、(p-nitrobenzyl) malonic acid diethyl esterを作り、6-(p-nitrobenzyl)-5,7-dioxo-1,4,8,11-tetraazacyclotridecane、6-(P-nitrobenzyl)-5,7-dioxo-1,11-(carboxymethyl)1,4,8,11-tetraazacyclotridecane、6-(P-aminobenzyl)-5,7-dioxo-1,11-(carboxymethyl)-1,4,8,11-tetraazacyclotridecaneを経て、6-(4-isothiocyanatobenzyl)-5,7-dioxo-1,11-(carboxymethyl)-1,4,8,11-tetraazacyclotridecaneの合成に至った。このキレートを用いてモノクローナル抗体がTc-99mにて標識できることを確認した。
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