研究概要 |
モノクローナル抗体による放射免疫療法を行うために放射性同位元素と抗体との標識法の検討を行った。前年度までにマクロサイクルの構造を持つキレート剤を合成し、抗体との結合を基礎的に確認していた。今回は実際にヒトへの投与も可能な条件で標識を行い、このキレートを使った抗体標識の有用性を評価した。このキレートは、6-(4-isothiocyanatobenzyl)-5,7-dioxo-1,11-(carboxymethl)-1,4,8,11-tetraazacyclotridecaneであり、抗体とTc-99mやRe-186、Re-188とを安定して結合させるために設計したキレートである。モノクローナル抗体として、表皮細胞増殖因子受容体(EGF-R)を認識する抗EGF-R抗体を用いた。腫瘍としてヒト腫瘍細胞株で、EGF-Rを多く発現している神経膠芽腫U-87、乳癌MB468の細胞株を用いた。コントロールとしてEGF-Rを発現していないエーリッヒ腹水腫瘍EATを用いた。これらの腫瘍をヌードマウスに移植し一定の大きさになった時点で、Tc-99m標識EGF-R抗体を投与して経時的に体内分布を検討した。イメージングプレートを用いてこの担癌ヌードマウスのイメージングも行った。従来のキレートを用いる標識よりも放射性化合物としての安定性が高く、神経膠芽腫U-87、乳癌MB468において良好な腫瘍/正常組織比を得ることができた。イメージングにおいても腫瘍集積が明瞭であった。 このキレートを用いることにより抗HER2抗体もRe-186、Re-188などのβ線放出核種と結合できることが期待できた。
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