肺癌に対する放射線および化学療法の治療効果予測に関する臨床的・病理組織学的研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15591300
• 研究機関: 北里大学
• 研究代表者: 早川 和重 北里大学, 医学部, 教授 (70114189)
• 研究分担者: 原 英則 北里大学, 医学部, 助手 (40286307)
• キーワード: 放射線治療 / 非小細胞肺癌 / テロメラーゼ / 癌抑制遺伝子 / 癌遺伝子 / 予後因子 / 放射線感受性

研究概要

非小細胞肺癌の生物学的特性を解明する目的で、切除例を対象にテロメラーゼ活性およびその触媒サブユニットhTERT mRNA(hTERT)の発現を半定量的に解析し、p53やK-ras遺伝子異常とともに、その臨床的有用性を検討した。対象は非小細胞肺癌切除例62例で、内訳は腺癌46、扁平上皮癌11、大細胞癌5例、I期36,II期10,IIIa期9,IIIb期7例であった。標本の癌部、非癌部組織のテロメラーゼ活性・hTERTの発現を、TRAP法及びRT-PCR法を用い半定量的に解析した。また、40例で癌部および非癌部組織からDNAを抽出しPCR-single-strand conformation polymorphism(SSCP)法によりp53(exon5-9)、K-ras(exon1-2)の遺伝子変異を検出し、さらにシーケンスにて確認した。テロメラーゼの発現と各遺伝子変異を年齢、性別、腫瘍径、組織型、分化度、T因子、N因子及び病期分類と比較検討した。テロメラーゼ活性・hTERTの発現は非癌部では認められず、癌部ではいずれも76%に発現が認められた。また、テロメラーゼ活性・hTERTの発現は、リンパ節転移の有無と相関し(NOvsN1+2、p<0.05)、テロメラーゼ活性は分化度や病期分類とも相関を示した(P<0.05)。しかし、他の因子との関連は認められなかった。また、無病生存率では、hTERT発現例は非発現例よりも予後不良であった(p=0.03344)。p53とK-rasの変異発現は、非癌部ではみられず、癌部でもそれぞれ22%、4%と変異頻度が低いため各予後因子との関連を検討することはできなかった。テロメラーゼ活性・hTERTの発現は、非小細胞肺癌の病勢を表すN因子・病期との相関が認められたことから、生物学的悪性度を反映する指標(予後因子)の一つとなりうる可能性が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Ishikawa H, Hayakawa K, NakanoT, et al.: "Comparable outcomes of radiation therapy without high-dose methotrexate for natients with primary central nervous system lymphoma."Jpn J Clin Oncol. 33・9. 443-449 (2003)
• [文献書誌] Kitamoto Y, Nakayama Y, Hayakawa_K, et al.: "Retrospective study of treatment results for limite-stage small-cell lung cancer in National Nishigunma Hospital."J Jpn Soc Ther Radiol Oncol. 15・2. 145-150 (2003)
• [文献書誌] Hayakawa K: "Radiation therapy in the treatment of lung cancer."JMAJ. 46・12. 537-541 (2003)
• [文献書誌] Onishi H, Nagata Y, Shirato H, Gomi K, Hayakawa K, et al.: "Stereotactic hypofractionated high-dose irradiation for patients with stage I non-small cell lung carcinom : Clinical outcomes in 241 cases..."Int J Radiat Oncol Biol Phys. 57・2suppl. S142 (2003)
• [文献書誌] 早川和重: "肺癌に対する放射線治療(総説)"日本医放会誌. 63・9. 533-538 (2003)
• [文献書誌] 早川和重, 西口 郁, 青木由紀: "肺癌の集学療法に占める標準的放射線療法の確立に関する臨床的・病理組織学的研究"INNERVISION(文部科学省科学研究費課題). 18・8. 56 (2003)
• [文献書誌] 高橋廣臣, 岡本牧人, 早川和重(編・著): "頭頸部腫瘍学"真興交易出版株式会社・医書出版部. 250 (2003)