初めに血管閉塞療法の急性期、亜急性期の基礎的検討を行った。対象として豚を用い、一側の腹壁静脈を露出しカテーテルとレーザーファイバーを挿入、横隔膜レベルから挿入部までレーザー照射を行った。実験中は血圧測定、動脈血酸素分圧測定を行い、照射前後に静脈、肺動脈造影を行った。終了後静脈を病理学的に検討した。結果、照射直後に腹壁静脈は閉塞した。明らかな血圧、動脈血酸素分圧の変動は見られず、肺塞栓発生は認めなかった。病理学的には、照射直後に血管壁欠損、血管周囲浮腫、血管内血栓が見られ、2週間後に血管内腔閉塞、肉芽組織から線維性組織への置換、血管壁の弾性繊維欠損と平滑筋組織減少が見られた。以上より、カテーテル、レーザーファイバー挿入手技確立、局所安全性の確認、肺塞栓励起や血圧低下等の重篤な副作用が無い事の確認、急性期、亜急性期の強固な血栓性閉塞の確認が得られた。引き続き、レーザー照射後の弾性包帯併用の効果、慢性期における静脈閉塞効果の検討のための基礎的検討を行った。パイロット実験では、2ヶ月後での血管閉塞の継続が確認されたが、豚の高い活動性、弾性包帯連続着用の困難さ、成長過程での病理学的検討の妥当性の問題等によりプロトコールの再検討を要した。一方、海外の長期観察臨床データ報告があり、それを軸とし当施設の倫理委員会の承認を得て臨床応用を開始した。対象は大伏在静脈逆流による下肢一次性静脈瘤の患者で、書面によるインフォームドコンセントの得られた者である。平成17年1月現在、全例で全観察期間(最長8ヶ月)を通じて大伏在静脈の完全閉塞が得られている。肺塞栓、血圧低下等の重篤な副作用は1例も見られてい無い。これらの研究成果は平成16年には米国AJR学会、日本静脈学会、日本脈管学会、日本医科大学医学会、平成17年には日本医学放射線学会にて発表し、今後ヨーロッパ心血管IVR学会にて発表予定である。
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