研究概要 |
脳血管内治療に必要な空間分解能と濃度分解能の評価を簡便に行え,かつ皮膚被曝線量の計測を行える頭部ファントムを作製し,標準的なファントムとして用いることができるかを検討した. 頭部ファントムは頭蓋骨に相当する部分を骨ファントム材,脳実質に等価のウレタンエラストマーを使用した.各種骨ファントム材で眼窩,側頭骨錐体部,後頭蓋の形状を簡易的に作製し,ウレタンエラストマーを用いて充填し,その中央部に円筒形の交換用空洞を作製した.その空洞にはウレタンエラストマーまたは水を用いた同型の円筒を作製し,目的に応じて交換できるようにした.空間分解能,濃度分解能計測器,マイクロカテーテル,ガイドワイヤー,コイルを操作できる模擬血管などをそれぞれに封入した.通常臨床で用いられている透視および撮影条件,脳血管内治療に必要な空間分解能と濃度分解能を描出しうる最低の条件を求めることができるかを検討した.また,その条件下における皮膚被曝線量の適切かつ簡便な計測が可能かを検討した. 空間分解能と濃度分解能を検討しつつ透視および撮影条件の設定とスキンドーズモニターとPEMNET(推定空中線量計)を用いた皮膚被曝線量の計測を比較,校正することが可能であった. 標準的なファントムを用いることで各施設間,機種間の差を取り除いた被曝線量の評価が可能となる.これを用いることで機器の劣化や被曝推定値の算出が容易となり,機器の管理やICRP Publ.85「IVRにおける放射線障害の回避」の勧告にそった脳血管内治療を受ける患者における皮膚被曝線量管理が容易かつ一定の基準に沿って行えるようになると考えられた.
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