研究概要 |
放射光単色X線で被写体を撮影する場合には,放射光源や単色X線を得るためのX線分光素子の特性により単色X線の被写体への入射方向に制限があり,臨床で実施されているような任意の方向からの撮影ができず被写体の立体的情報を簡便にまた短時間で得ることは難しい。そこで,被写体を低速で回転させてX線撮影した後に高速描画する方法とラウエ方式の分光結晶で放射光単色X線の入射方向を2方向とする方法により,被写体の,特に心血管系の立体的情報を得る方法を検討してきた。今年度は,特に前者の方法に着目して,現在まで本研究代表者,研究分担者が参加している「造影剤の静脈注入による心血管系の簡便な検査システムの臨床応用」が実施されてきたPF-AR加速器の放射光ビームラインNE1において,臨床応用時と同撮影条件にて人体ファントームを用いた実用的な評価を中心に検討を行った。被験者への負担を少なくすることを模擬して人体ファントームを低速回転しながら心血管系をX線撮影し,その後,計算機上のデジタル画像を高速描画する方法が立体的情報を得るのに有用であることを確認できた。このとき,X線エネルギーは造影剤のK吸収端上側である35keV,単色X線照射面積は縦横約100mm,撮像系はII-TV系,1枚の画像の照射時間は4msecであった。今後,実際の臨床検査を実施するための詳細な具体的検討を行っていく予定である。本研究で得られた成果は,心血管系のX線透過像だけでなく,被写体内での屈折効果を用いる方法を含めて多くの放射光イメージング法に応用できると期待される。
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