脳賦活時の機能的磁気共鳴断層撮影法による血液酸素濃度依存性信号発生機構の解明

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15591314
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 伊藤 浩 東北大学, 医学部附属病院, 講師 (20360357)
• 研究分担者: 後藤 了以 東北大学, 医学部附属病院, 助手 (70302221) ; 茨木 正信 秋田県立脳血管研究センター, 放射線医学研究部, 研究員 (40360359) ; 菅野 巌 秋田県立脳血管研究センター, 放射線医学研究部, 副研究局長 (10360356)
• キーワード: fMRI / BOLD / PET / CBF / CMRO2 / OEF

研究概要

機能的磁気共鳴断層撮影法(fMRI)により測定される脳賦活部位の血液酸素濃度依存性(BOLD)信号と局所脳血流量(CBF)および局所脳酸素消費量(CMRO_2)の変化量との関係を調べるべく、今年度はfMRIおよびポジトロン放出断層撮影法(PET)を用いた測定が行われた。測定は伊藤(研究代表者)が菅野(研究分担者)と茨木(研究分担者)の協力の下に行い、男性健常志願者を対象に安静時および手指運動負荷時のそれぞれの条件下でfMRIとPETによる測定が行われた。データ解析は、画像処理ソフトウェアパッケージのDr.View/LINUXおよびフリーのソフトウェアパッケージのSPM99を用いて伊藤(研究代表者)が茨木(研究分担者)と後藤(研究分担者)の協力の下に行った。現在までの測定および解析によると、手指運動負荷時の脳賦活部位である一次運動野におけるBOLD信号変化とCBFおよびCMRO_2の変化には有意な相関がみられた。また、従来の仮説と同様にCBFの変化量はCMRO_2の変化量よりも大きく両者の変化量には乖離がみられた。結果としてCMRO_2とCBFの比に相当する脳酸素摂取率(OEF)は脳賦活部位において低下しており、OEFの変化率はBOLD信号の変化率と有意な逆相関を示した。これらの結果は、fMRIによる脳賦活部位のBOLD信号発生はCBFとCMRO_2の変化量の乖離による酸化ヘモグロビン濃度の上昇に由来するものであるという仮説を直接支持するものである。今後は手指運動負荷により観察されるその他の脳賦活部位および脳機能抑制部位についても同様の解析を行い、BOLD信号変化率とCBFおよびCMRO_2の変化量乖離との関係をさらに詳細に検討することによりfMRIによるBOLD信号発生機構の解明を進めていく予定である。また近年ではfMRIを用いてCMRO_2を測定する試みも行われはじめているが、この測定の理論式における未知の定数を本研究の結果から導き出すことについても試みる予定である。

研究成果

• [文献書誌] Ito H, Kanno I, Kato C, Sasaki T, Ishii K, Ouchi Y, Iida A, Okazawa H, Hayashida K, Tsuyuguchi N, Ishii K, Kuwabara Y, Senda M: "Database of normal human cerebral blood flow, cerebral blood volume, cerebral oxygen extraction fraction and cerebral metabolic rate of oxygen measured by positron emission tomography with O-15-labelled carbon dioxide or water, carbon monoxide and oxygen : a multicentre study in Japan"European J Nuclear Medicine and Molecular Imaging. 17(in press). (2004)
• [文献書誌] Ito H, Kanno I, Hatazawa J, Miuura S: "Changes in human cerebral blood flow and myocardial blood flow during mental stress measured by dual positron emission tomography"Annals of Nuclear Medicine. 17. 381-386 (2003)
• [文献書誌] Ito H, Kanno I, Takahashi K, Ibaraki M, Miura S: "Regional distribution of human cerebral vascular mean transit time measured by positron emission tomography"Neuroimage. 19. 1163-1169 (2003)
• [文献書誌] Ito H, Kanno I, Ibaraki M, Hatazawa J, Miura S: "Changes in human cerebral blood flow and cerebral blood volume during hypercapnia and hypocapnia measured by positron emission tomography"J Cerebral Blood Flow and Metabolism. 23. 665-670 (2003)