研究概要 |
膵臓癌培養細胞株、MIAPaca(膵管内乳頭腺癌由来),Bx-Pc, Panc-1(浸潤性膵癌由来)に重粒子線照射、X線照射を行い、生存率をコロニー形成法を用いて検討した。重粒子線ではX線と比較して酸素濃度によrり殺細胞作用に影響を受けなかった。そこでこれらの細胞に重粒子線を照射しタンパクの発現をウエスタンブロット法を用いて測定した。乳頭腺癌は浸潤性膵癌より一般的に血流が良好であるが、VEGF-AおよびそのレセプターであるVEGFR-2はともに浸潤膵癌であるPanc-1の方が発現が高かった。窒素ガスを培養フラスコに1時間流し低酸素にした状態におくとVEGF-A、VEGFR-2の発現は変化は認められず、重粒子線照射によってもそれらの発現は変化しなかった。一方局所再発に関与するVEGF-C(リンパ管内皮細胞増殖因子)(Niedergethmann: Pancreas,2002)の発現は低酸素においても重粒子線照射においても変化しなかったが、そのレセプターであるVEGFR-3は低酸素状態で著明に増加し重粒子線照射にて発現が低下した。これらのことより膵癌細胞は低酸素状態により自己の受容体であるVEGFR-3の発現を増加し増殖能・浸潤能を獲得し局所再発を引き起こすものと考えられた。重粒子線照射はこのVEGFR-3の発現を低下することにより局所再発を抑制しているものと考えられた。さらにAntibody Arrayを用いて発現タンパクの網羅的解析を行った。これらの結果から重粒子線照射では細胞周期関連タンパクを増加し細胞周期を促進するが、低酸素下ではそれらが抑制され細胞周期を遅延し細胞修復を促進していること、およびDNA修復タンパクの抑制などにより抵抗性を獲得していることが示唆された。また低酸素状態では神経突起進展因子の変動が著明に認められこれらが、膵外神経叢への進展の抑制に関与していると推察された。
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