TRPV2チャネルはPurkinje細胞などの神経細胞、肝臓・腎臓の上皮細胞、膵ランゲルハンス島の内分泌細胞や消化管の神経内分泌細胞、さらに肺・脾臓などに高発現している。肺・脾臓では主にマクロファージに限局して発現している。そこでマクロファージに発現するTRPV2の機能とその調節機構を下垂体由来のマクロファージ細胞株であるTtTM87細胞を用いて検討した。まずTtTM87細胞におけるTRPV2の発現をRT-PCRにより確認した。TRPVファミリーに属する他のチャネルの発現は極めて低かった。またパッチクランプ法によりRuthenium red感受性のCs+電流を確認した。この電流はdominant-negative型の変異TRPV2遺伝子導入により消失した。TT87細胞をfMLPで刺激すると細胞内カルシウム濃度([Ca2+]c)の増加が観察された。fMLPを局所的に投与すると、fMLP投与部位に一致して局所的な[Ca2+]c上昇が観察された。GFP標識したTRPV2をモニターすると、fMLPの局所投与によりTRPV2は局所的に細胞膜にトランスローケーションした。Ruthenium red投与あるいはdominant-negative型変異TRPV2遺伝子導入によりTRPV2チャネルを抑制すると、fMPLにより惹起される局所的な[Ca2+]c上昇は奥制された。FMPLによるTRPV2チャネルのトランスローケーションPI3キナーゼを抑制するLY294002の投与により抑制され、また百日咳毒素の前処置によって消失した。以上の結果から、マクロファージ細胞株TtTM87細胞にはTRPV2チャネルが発現し、fMLPによりPI3キナーゼ依存的機構によって細胞膜にトランスローケーションする。これがfMLPによる局所的な[Ca2+]c上昇に関与していることが明らかになった。
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