研究概要 |
(目的):STI571(Gleevec)はPDGFRのtyrosine kinaseを阻害することが知られており,胃癌・乳癌細胞のPDGF/PDGFR増殖系に対するSTI571の効果をin vitro, in vivoで検討した.(対象・方法):胃癌細胞株MKN-45,乳癌細胞MDA-MB-231を用いて,in vitro抗腫瘍効果はMTT法,in vivo効果はヌードマウス可移植性腫瘍モデルで検討した.遺伝子発現はウエスタン法・免疫組織染色法,アポトーシスの誘導はTUNEL法で判定した.(結果)胃癌細胞におけるSTI571単独のin vitroの抗腫瘍効果は5μMで軽度に見られたが,5-fluorouracil(5-FU)との併用効果は認められなかった.腫瘍細胞のPDGFR-α,PDGFR-βの発現はみられたが,PDGF-BBの発現は軽度であった.In vivoの効果は,5-FU, paclitaxel(TXL)との併用で抗腫瘍効果の増強を認め,5-FUでは有意の効果増強がみられた(P=0.004).抗腫瘍効果の増強はアポトーシス誘導に一致し,腫瘍細胞におけるPDGF-BB発現,間質系細胞でのPDGFR-βの発現低下,pPDGFR-β活性の減少が認められた.また,腫瘍血管内皮細胞でのCD31の減少を認め,血管新生減少の効果発現への関与が示唆された.乳癌細胞でも同様の機序によりにTXL, docetaxel(TXT)に対する抗腫瘍効果の増強が認められた.(考察):STI571の併用はPDGF-BBを介したautocrine腫瘍増殖抑制と間質系細胞でのparacrine増殖抑制機序がinterstitial fluid pressure(IFP)を減少させ,抗癌剤併用による効果増強に寄与していることが示唆された.
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