ラット-マウス間の異種移植での免疫寛容導入にCD27-CD70間の細胞間シグナル伝達抑制により免疫寛容が可能であるか否かを検討した。 (方法)マウス異所性心移植の手技を用いて、ラットからマウスヘの心臓移植の手技を確立した。Mixed chimerismの作成は、ラットの骨髄細胞60x10^6個を3Gy全身放射線照射されたマウスヘ静脈内投与する事で行われた。抗CD40Lモノクローナル抗体(MR1)、抗CD8モノクローナル抗体(2.43)、抗ナチュラルキラー細胞抗体(NK1.1)、抗Thy1.2抗体(Ty1.2)、抗CD27抗体(CD70)を投与した群に対しての実験を行った。 (結果)ラットからマウスヘの異種移植では、無処置群で3〜7日目に移植心が拒絶された。抗体投与のみで骨髄移植を行わなかった群では、移植されたラットの心臓は移植後130日前後で全例拒絶された。抗体投与と骨髄移植を併用した群では、移植されたラットの心臓は移植後300目を超えて生着した。これらのマウスではmixed chimerismが認められた。免疫寛容が得られたか否かを2回目のラットの心臓を移植することで検討した。その結果、最初の移植心が生着したマウスでは、2回目の移植心も生着し、組織学検査では拒絶反応は認められなかった。以上の結果より、ラットの移植心に対して免疫寛容が得られた。一方で、抗CD8抗体の代わりに抗CD27抗体を用いてmixed chimerismが導入されるか否かを検討した。しかしながら、抗CD27抗体、抗CD40L抗体、抗Thy1.2抗体、抗NK1.1抗体を用いた場合mixed chimerismは導入されなかった。抗CD27抗体の効果をみるためにマウスを用いた同種モデルでmixed chimerismが導入されるかを検討したが、抗CD8抗体、抗CD40L抗体を用いた場合はmixed chimerismが導入されたが、抗CD27抗体、抗CD40L抗体を用いた場合にはmixed chimerismは導入されなかった。 (結論)抗CD27抗体はCD8細胞を介した拒絶反応を抑制することができなかった。
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