研究概要 |
アポトーシスを抑制する作用を持つ内在性癌遺伝子のbc1-2は、各種抗癌剤に対して抵抗性を獲得した難治性腫瘍で高発現しており、これらの癌種の発症および悪性化の重要な要因と考えられている。昨年度の研究では、bc1-2ファミリーが高発現することで抗癌剤耐性を獲得したと考えるMDA-MB231,ZR75-1,KPL-1の3種類のヒト乳癌細胞株を用いて、Tetrocarcin(TC-A)の抗腫瘍効果の作用機序に関して解析を行った。まず、TC-Aの抗腫瘍効果を既存の抗癌剤と比較検討するために、現在臨床で使用されているfirst-lineの抗癌剤であるドキソルビシンとpaclitaxelを用いて比較、検討した。その結果、既存の2剤よりも低濃度で抗腫瘍効果が認められ、同濃度では5倍以上の抗腫瘍効果が認められた(MTT assay)。また、Hoechst/PIによる蛍光二重染色により、この抗腫瘍効果がアポトーシスを介したものであることを形態学的に証明した。さらに、このアポトーシスの誘導機序を解明するために、DNA ladderformationやwestern blotting法による分子生物学的な解析を行ったところ、caspase-9、caspase-3の活性化、PARPの分解産物の産生増強、Cytochromecの放出の増強が経時的に認められ、アポトーシスがミトコンドリア経路を介して誘導されていることを明らかにした。これらの結果をもとに、本年度の研究では、TC-Aの細胞内そのtarget moleculeの同定(ビアコアシステム使用)を行うとともに、in vivoの系(担癌ヌードマウス)を用いて臨床応用の可能性を検討していく予定である。
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