研究概要 |
癌の中には、アポトーシス抑制分子であるBcl-2、Bcl-xLの過剰発現により、薬剤耐性を獲得した癌も多く存在する。今回われわれが着目したTetroarcin A (TC-A)は、Bcl-2やBcl-xLの特異的阻害剤であり、Bcl-2,Bcl-xLの過剰発現により抗癌剤耐性を獲得したヒト乳癌細胞に対して、新規の分子標的治療法となり得ると考え、解析を行ってきた。Bcl-2、Bcl-xLをともに強発現しているヒト乳癌細胞株であるMDA-MB-231、ZR75-1、KPL-1の3種類とBcl-2、Bcl-xLの発現の弱いヒト乳癌細胞株のMX-1を用いて、TC-Aの抗腫瘍効果とその機序の分子生物学的解析を行った。その結果、非常に低濃度(2.5μM)のTC-Aを48時間、それぞれの細胞に作用させた後、細胞傷害活性を測定したところ、すべての細胞株でそのcell viabilityの低下と細胞死が認められた。また、蛍光染色法による形態学的解析でアポトーシスに特徴的なDMの断片化が証明され、western blottingによるアポトーシス関連分子の発現量の解析では、cytochrome cの放出の増強、caspase-3活性の増強、PARP分解活性の増強が証明された。その結果、TC-Aにより誘導される細胞死が、ミトコンドリア経路を介したアポトーシスによるものであることを証明した。以上の研究成果については、2003年日本外科学会総会、2004年日本外科学会総会、2004年日本乳癌学会総会で報告を行った。
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