研究概要 |
ヒト乳癌培養細胞株で高転移能を有するMDA-MB-231細胞を用いてCTによる細胞内シグナル伝達系および浸潤転移関連因子(urokinase-type plasminogen activator ; uPA, matrix metaroprotease ; MMP2,MMP9)の発現と浸潤能への影響について調べた。[方法]MDA-MB-231細胞を10^<-8>Mのsalmon CTおよび種々のシグナル伝達系阻害物質にて処理し、ERK1/2のリン酸化をウェスタンブロツテイング法により解析した。uPAの発現は、ノーザンブロツテイング法により解析し、MMPの発現はザイモグラフィー法により検出した。細胞浸潤能は、matrigel invasion chamberによる解析を行った。[結果]本細胞株ではERK1/2の活性化が恒常的に起こっており、CTはこの活性化を一過性に抑制することが明らかとなった。さらにPKA阻害剤であるH89はCTによるERK1/2のリン酸化阻害を抑制したことから、CTによるERK1/2のリン酸化阻害はPKA系を介していることが考えられた。また、CT処理によりuPAの発現抑制が見られた。ERK1/2の上流のMEK阻害剤であるPD98059でも同様の結果が得られた。一方、MMP2,9の発現変動にCTは効果を示さなかった。さらに、CT処理によりMDA-MB-231細胞の浸潤がコントロール区と比較して有意に抑制された。[結論]CTは、本乳癌細胞においてERKの恒常的なリン酸化をPKへ系を通じて抑制し、浸潤転移関連因子であるuPAの発現を抑制することが明らかとなった。さらに細胞浸潤能を抑制することが明らかとなった。以上の結果より、浸潤にuPAの高い発現が起因している癌細胞においてCTはその浸潤能を低下させる効果のあることが示唆された。
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